Shinrai

悪い口コミへの対応と返信例文|掲載しない基準はどこまで?【2026年版】

許諾・法律 公開: 2026年7月11日 約10分 筆者: 野原 琉海(Shinrai開発者)

星1つの評価や厳しい感想が届くと、「消してしまいたい」「うちのサイトには載せないでおこう」と思うのは自然な反応です。ただ結論から言うと、悪い口コミは原則として削除できません。 そしてサイト側で「良い声だけを選ぶ」運用にも、景品表示法上のリスクがあります。この記事では、届いた直後の返信の型から、「掲載しない」という選択がどこまで許されるかの法的な境界線、Googleの口コミを削除できる例外まで、実務目線で整理します。

私は業務効率化に特化したエンジニアとして、お客様の声を管理するサービス「Shinrai」を開発・運営しています。設計にあたって消費者庁の運用基準やGoogleの口コミポリシーを一次情報で読み込みました。この記事では、その知見を実務に落とし込んだ形でまとめます。

悪い口コミが届いたら、まず何をすべきか — 返信の基本

低評価の口コミを見つけた直後にやってはいけないのは、感情的な反論と、無視です。どちらも第三者から見ている他のお客様の印象を下げます。

返信の基本5ステップ

一般的に効果的とされる返信の型は、次の5ステップに整理できます。

  1. 感謝: まず口コミを書いてくれたこと自体へのお礼を伝える
  2. 共感・謝罪: 不快な思いをさせたことへの共感を示す(事実関係を認める謝罪ではない点に注意)
  3. 事実の確認: 必要であれば、事実と異なる点を淡々と補足する
  4. 改善への言及: どう改善するか、または改善を検討していることを伝える
  5. 再来店・再利用への招き: 「またの機会にお声がけいただければ」と締める

私がお客様の声を扱うサービスを設計する過程で見てきた失敗例の多くは、この順番を飛ばして③の事実確認から始めてしまうケースです。反論から入ると、読んでいる第三者には「言い訳」に映ります。①②を先に置くだけで印象がかなり変わります。

割引・謝礼で口コミを書き直してもらうのはNG

低評価がついたお客様に「クーポンをお渡しするので評価を変更していただけませんか」と持ちかける対応を見かけますが、これは避けるべきです。見返りと引き換えに表示内容を変えさせる行為は、後述するステマ規制の「利益提供秘匿型」に近い構造になり得ます。改善提案と評価の書き換え依頼は、切り離して考える必要があります。

星3以下にも返信すべきか

「星3」のような、悪い口コミとまでは言えない評価にも返信は有効です。Googleは口コミガイドラインで、好意的な評価と批判的な評価が混在している状態の方が、閲覧者からの信頼を得やすいという考え方を示しています。星の低さだけで返信の優先度を決めず、具体的な指摘が書かれているものから返信するのが実務的です。

「悪い口コミを掲載しない」という選択は法律的に許されるか

ここからが本題です。自社サイトの「お客様の声」欄で、悪い口コミを載せない、あるいは良い口コミだけを選んで載せる——これは違法なのでしょうか。

消費者庁の運用基準 — 「恣意的な抽出」がボーダーライン

2023年10月1日に施行されたステマ規制(景品表示法第5条第3号に基づく指定告示)の運用基準は、事業者が第三者の声を自社サイトに引用する場合の扱いを具体的に示しています。第三者の表示を恣意的に抽出せず、内容を変えずにそのまま引用する場合は「事業者の表示」に当たらず、規制の対象外です。

一方で、次のような操作を加えると「事業者の表示」と見なされ、規制の対象になり得ます。

つまり分かれ目は「悪い口コミを載せるか載せないか」そのものではなく、「都合よく選んだ」と評価されるかどうかです。

レビューゲーティングは景品表示法違反のリスクがある

低評価の口コミだけを意図的にブロックし、高評価のみを表示・転載する仕組みは「レビューゲーティング」と呼ばれます。これは、実際よりもサービスの品質を著しく良く見せかける表示として、景品表示法の「優良誤認表示」に該当するリスクが指摘されています。件数の少ない星評価だけを取り出して「お客様満足度が高い証拠」として並べる行為も、同じ論点に触れます。

実際に処分された事例

抽象論だけでは実感しにくいので、実際にステマ規制で措置命令が出た事例を挙げます。

事例 何が問題とされたか
医療法人社団祐真会 2024年 インフルエンザワクチン接種者に、Googleマップで星5評価を投稿することを条件に接種費用を割引。利益提供秘匿型に該当
大正製薬 2024年 インフルエンサーに報酬(現金約1万円・商品約3万円相当)を渡して投稿を依頼し、その一部を自社サイトに抜粋掲載

大正製薬の事例で処分の対象になったのは、投稿そのものではなく「一部抜粋して自社サイトに転載した」部分です。抜粋・編集という、お客様の声ページで日常的にやっている作業がステマ規制の対象になり得ることを示した事例だと私は見ています。ステマ規制の全体像と実務チェックリストは、ステマ規制で口コミ・お客様の声はどう変わった?チェックリスト付き【2026年版】で詳しく整理しています。

掲載する/しないの判断基準 — 批判的な意見と誹謗中傷は別物

「悪い口コミ」とひとまとめにされがちですが、法的な扱いはまったく違う2種類が混ざっています。

種類 具体例 掲載可否の考え方
批判的だが正当な意見 「対応が遅かった」「価格の割に量が少ない」 隠さず受け止める対象。恣意的に除外すると規制リスクがある
誹謗中傷・事実無根の内容 事実と異なる中傷、差別的表現、脅迫的な文言 掲載義務はない。プラットフォームへの削除申請の対象になり得る
個人情報を含む内容 従業員の実名を挙げた攻撃的な投稿など プライバシー侵害として削除申請の対象になり得る

つまり「見せない」の境界線は、内容が厳しいかどうかではなく、その口コミが正当な意見か、権利侵害に当たる内容かどうかで引くべきです。前者を隠すのはリスクで、後者に対応するのは正当な権利行使です。この2つを混同すると、「クレームは全部消す」という誠実さを欠いた運用になりかねません。

Googleの口コミは削除できるのか — ポリシー違反の申告方法

自社サイトとは別に、Googleマップの口コミそのものを削除したいという相談もよく受けます。

Googleの口コミは、Googleが定めるポリシーに明確に違反している場合のみ削除の対象になります。対象になり得るのは、スパム、虚偽の内容、差別的・暴力的な表現、個人情報の露出、利害関係者による自作自演の投稿などです。単に厳しい評価や、主観的な不満が書かれているだけの口コミは、内容が不快でも削除の対象にはなりにくいのが実情です。

申告の手順は次の通りです。

【Google口コミの違反報告手順】
1. Googleマップで該当の口コミを開く
2. 口コミ右上の「︙」(縦の三点リーダー)をクリック
3. 「不適切な口コミを報告」を選択
4. 該当する違反理由(スパム/不適切な内容/利害関係者による投稿 等)を選んで送信
5. 審査結果はメールまたはビジネスプロフィールのダッシュボードで通知される

審査には数日から数週間かかることがあります。急いで消したい気持ちは分かりますが、審査を待つ間に感情的な削除交渉を投稿者に持ちかけるのは避けてください。かえってやり取りの内容が新たな口コミやSNS投稿として広がるリスクがあります。Googleの口コミ全般の扱い方はGoogle口コミをサイトに載せる方法3選|手順と注意点【2026年版】でも解説しています。

自社サイトでお客様の声を扱うときの実務ルール

法律面の整理を踏まえると、自社サイトの運用で押さえるべきことは意外とシンプルです。

まず、低評価も含めて集める設計にすることです。感想を依頼する時点で「良い声だけを送ってください」という前提を作らず、率直な感想を依頼する文面にしておけば、後から「都合の良い声だけ集めた」と見られるリスクが下がります。感想の依頼文そのものについてはお客様の声の依頼文、どう書く?業種別テンプレート7選【2026年版】で業種別にまとめています。

次に、掲載可否の基準を先に決めて記録することです。「批判的な意見でも、誹謗中傷や個人情報を含まない限りは原則掲載する」という基準を先に持っておくと、個別の判断がぶれません。私がお客様の声を扱うサービスを設計したとき、低評価の声を「掲載しない」に振り分けて管理する機能をあえて用意しました。狙いは声を隠すことではなく、どの声を、どういう理由で掲載しなかったかを記録に残すことです。理由が記録に残っていれば、恣意的な抽出ではないことを後から説明できます。掲載許諾の記録の取り方全般はお客様の声の掲載許諾はどう取る?同意文テンプレート付き完全ガイド【2026年版】で解説しています。

「批判的な声を隠さず載せると、印象が悪くなるのでは」と感じるかもしれません。実際には逆の効果が語られることが多く、Googleも好意的な評価と批判的な評価が混在している状態の方が閲覧者の信頼を得やすいという考え方を公表しています。ゼロか百かではなく、誹謗中傷でない限りは受け止める、という姿勢の方が長期的には安全です。

業種別の注意点

業種によって、悪い口コミへの対応で気をつける比重が変わります。

いずれの業種でも共通しているのは、悪い口コミへの対応は「隠す技術」ではなく「記録して誠実に応じる技術」だという点です。

よくある質問

Q. 悪い口コミを見なかったことにして放置してもいいですか? 放置は避けてください。返信がないこと自体が、他のお客様には「対応しない店」という印象を与えます。返信までに時間がかかっても、後から返信する方が無視し続けるより印象は良くなります。

Q. 星の低い口コミだけ非表示にする機能を使うのは違法ですか? 自社サイトで低評価を意図的に除外し、高評価だけを見せる運用(レビューゲーティング)は、優良誤認表示に該当するリスクが指摘されています。掲載しない場合も、その理由を記録に残す運用にしてください。

Q. 誹謗中傷に近い口コミが来たら、まず何をすべきですか? 内容をスクリーンショット等で保存し、Googleなどプラットフォームの違反報告手順に沿って申告してください。事実と異なる内容が含まれる場合は、弁護士への相談も選択肢になります。

Q. お客様に直接返信を求められたら、どう答えればいいですか? サイト上の返信とは別に、個別の連絡先が分かる場合は直接のフォローも有効です。ただし直接連絡する場合も、口コミへの返信自体は削除や取り下げの交渉と誤解されないよう、公開の場での対応を先に済ませておくのが安全です。

Q. 低評価の口コミが多い時期があった場合、まとめて対応すべきですか? まとめて返信すること自体は問題ありませんが、テンプレート的な返信の使い回しは避けてください。指摘内容ごとに事実確認の部分だけでも個別化すると、誠実さが伝わります。

まとめ — 「見せない」の境界線は、隠すか記録するかにある

悪い口コミへの対応を整理すると、次の3点に集約できます。

  1. 返信は感謝→共感→事実確認→改善→再来店の招きの順で組み立てる
  2. 「悪い口コミを載せない」という選択自体は、恣意的な抽出と見なされるとリスクがある。批判的な意見と誹謗中傷は分けて扱う
  3. 掲載しない場合も、その理由を記録に残すことが、都合の良い声だけを選んだのではないという説明の裏付けになる

悪い口コミは、隠すべき弱点ではなく、対応の誠実さを見せる機会でもあります。感情的に消したくなる気持ちを一度置いて、記録と手順で対応する——それが2026年時点で最も現実的な向き合い方だと私は考えています。

番頭より

この記事の内容 — 声の収集フォーム、掲載許諾の記録、原文の保存、サイトへの表示 — は、Shinraiがひとつの台帳としてお引き受けします。無料で始められます。

Shinraiを見てみる