「せっかく時間をいただいてインタビューしたのに、出てきたのは『満足しています』『助かりました』という一言だけだった」——この壁にぶつかった経験がある方は多いはずです。原因の多くは、質問の作り方と聞く順番にあります。書面アンケートでは引き出しにくい具体的なエピソードや数字は、対話形式のインタビューだからこそ深掘りできます。 この記事では、そのまま使える質問テンプレート10問と、深掘りの重ね方、アンケートとの使い分けまでまとめます。
私は業務効率化に特化したエンジニアとして、お客様の声を管理するサービス「Shinrai」を開発・運営しています。インタビュー原稿の確認・掲載許諾のフローを設計する過程で、同じ10問でも聞く順番と重ね方だけで自由記述の深さが大きく変わる場面を何度も見てきました。この記事では、その知見をサービスを使わない方にもそのまま実践できる形で共有します。
アンケートとインタビュー、掲載用の声を集めるならどちらを選ぶべきか
「お客様の声」を集める手段は、大きく分けて2つあります。書面やフォームで回答してもらうアンケートと、対面・電話・オンライン通話で聞くインタビューです。両者は似ているようで、向いている場面が違います。
アンケートは、回答者が自分のペースで自由記述欄に書き込む形式のため、短時間で多くの件数を集めやすい一方、抽象的な一言で終わりやすいという弱点があります。質問項目の作り方についてはお客様の声アンケートの質問、何を聞く?テンプレート10選【2026年版】で詳しく扱っています。
一方でインタビューは、聞き手がその場で「もう少し具体的に教えてください」と重ねて聞けるため、1件あたりの深さで勝ります。次のような場面ではインタビュー形式を選ぶ方が実務的です。
- 導入事例のように、1件をじっくり深掘りして掲載する前提の声
- 写真館の撮影後や、講座・スクールの受講後など、感情や変化を数分話してもらえるタイミングがある場合
- 動画テスティモニアルとして残したい場合(文章だけでなく話し方・表情も記録になる)
反対に、件数をまず集めたい段階や、忙しいお客様に負担をかけたくない場面では、アンケートの方が向いています。私が見てきた範囲では、両方を組み合わせている事業者が最も運用が続きやすい傾向にあります。まずアンケートで全体の感想を集め、その中で特に具体的な回答をくれたお客様にだけ、追加でインタビューを依頼するという二段構えです。
インタビュー前に準備すること — 所要時間・依頼の伝え方
インタビューは「時間をいただく」お願いになるため、依頼の段階で負担感を減らしておくことが重要です。私がこれまで確認してきた範囲では、対面・オンラインとも15〜30分が、お客様の負担と聞ける内容のバランスが取れる目安です。30分を超えると、日程調整自体のハードルが上がり、依頼への返信が得にくくなる印象があります。
依頼文には、次の3点を必ず入れてください。
- 所要時間の目安(例:「15分ほどお時間をいただけますか」)
- 形式(対面・電話・オンライン通話のいずれか、任意で選べると尚よい)
- 原稿確認ができること(「まとめた内容は事前にご確認いただき、修正のご希望があれば反映します」)
依頼文の文例はお客様の声の依頼文、どう書く?業種別テンプレート7選【2026年版】にも掲載していますが、インタビュー依頼では特に「原稿確認ができる」という一言を入れることで、率直に話してもらいやすくなります。話した内容がそのまま公開されるという不安を先に取り除いておくためです。
「インタビューは負担が大きいから頼みにくい」と感じるかもしれません。実際、依頼の仕方を誤ると断られやすくなるのは事実です。だからこそ、所要時間を先に伝え、形式を選べるようにし、原稿確認という後戻りできる余地を用意しておく——この3点を先に伝えることで、心理的なハードルは大きく下がります。
質問テンプレート10選(コピペで使える)
以下はそのまま使える質問シートです。全問聞く必要はなく、インタビューの目的や所要時間に応じて6〜8問程度に絞ってください。
【お客様インタビュー 質問シート】
1. 今回のご利用・ご購入を検討し始めたきっかけを教えてください
2. その時、どんな悩みや不安をお持ちでしたか
3. 数ある選択肢の中で、最終的に当店・当社を選んだ決め手は何でしたか
4. 実際にご利用いただいて、最初に感じたことを教えてください
5. ご利用前とご利用後で、変わったことがあれば教えてください
6. 一番印象に残っている場面や出来事はありますか
7. 逆に、不安だったこと・戸惑ったことはありましたか
8. もし数字で表せることがあれば教えてください(時間・回数・変化の度合いなど)
9. どんな方に特におすすめしたいと感じますか
10. これから検討している方に、一言メッセージをお願いします
それぞれの質問には狙いがあります。1〜2は「利用前の状態」を具体的に引き出すための質問で、ここが曖昧だと後の回答も曖昧になります。3は決め手を聞くことで、他の検討者が背中を押される材料になります。4〜6は感情や場面を問う質問で、「満足していますか」のような評価だけを尋ねる聞き方より、事実や場面を尋ねる聞き方の方が具体的な答えが返ってきやすくなります。7は反論を先回りして潰す質問で、良い点だけでなく戸惑った点も含めることで声全体の信頼性につながると私は考えています。8は数字を引き出すための質問で、9〜10はまとめと他者への推薦を引き出す質問です。
「なんとなく良かった」で終わらせない深掘りの重ね方
質問リストを用意しても、最初の答えが「良かったです」の一言で終わることは珍しくありません。ここで効くのが、回答の中から一つキーワードを拾って重ねて聞く「深掘り質問」です。私が原稿確認のやり取りを見てきた中で、具体的な回答に変わりやすかった重ね方を3パターン紹介します。
パターン1: キーワードを拾って理由を聞く 一次質問「使ってみていかがでしたか」→回答「思ったより早かったです」→重ね質問「『思ったより早い』というのは、何と比べてそう感じましたか」
パターン2: 数字に変換して聞く 一次質問「時間が短縮できましたか」→回答「かなり楽になりました」→重ね質問「大体どのくらいの時間がかかっていたものが、どのくらいになりましたか」
パターン3: 場面を思い出してもらう 一次質問「印象に残っていることはありますか」→回答「特にないですが良かったです」→重ね質問「では、利用の中で一番ほっとした瞬間はどこでしたか」
3つに共通するのは、「はい・いいえ」で終わる聞き方ではなく、相手が場面や数字で答えざるを得ない聞き方に言い換えている点です。重ね質問は多くても1つの回答につき1〜2回にとどめてください。何度も重ねると、お客様が問い詰められている印象を持ってしまいます。
業種別のアレンジ例 — 聞く内容は業種で変わる
同じ10問のテンプレートでも、業種によって重点を置くべき質問は変わります。
| 業種 | 特に重点を置く質問 | 理由 |
|---|---|---|
| 写真館 | 決め手・印象に残っている場面 | 撮影は一度きりの体験のため、感情の場面が強く効く |
| コーチ・コンサル | 利用前後の変化・数字 | 成果の変化が意思決定の主要な判断材料になる |
| 講座・スクール | 利用前の不安・おすすめしたい相手 | 受講を迷っている層が最も知りたい情報のため |
| 士業(税理士・行政書士等) | 決め手・戸惑った点 | 専門性への信頼と、率直さの両方が効く業種のため |
写真館向けの声の集め方・シーン別の質問例は写真館の口コミはどう集める?シーン別の載せ方手順【2026年版】にまとめています。業種ごとに「検討中の人が一番知りたいこと」から逆算して質問の重点を決めるのが実務的です。
インタビュー後にやること — 原稿確認と掲載許諾
インタビューが終わったら、話した内容をそのまま公開してよいわけではありません。文字起こしした内容を読みやすく整えた上で、必ずお客様本人に原稿を確認してもらう工程を挟んでください。
原稿確認の際に伝えるべきことは次の3点です。
- 表記の確認(実名・イニシャル・匿名のいずれで掲載するか)
- 修正の可否(数字や固有名詞の言い回しなど、事実と異なる部分があれば直せること)
- 掲載範囲(自社サイトのみか、SNSや広告にも使うか)
原文をどう記録し、いつ・誰から・どの範囲で許諾を得たかを台帳として残しておくことが、後から「言った・言わない」のトラブルを防ぎます。掲載許諾の取り方と同意文のテンプレートはお客様の声の掲載許諾はどう取る?同意文テンプレート付き完全ガイド【2026年版】に、集めた声を特集ページとして見せる方法は「お客様の声」ページはどう作る?Wall of Loveの型と実例【2026年版】にまとめています。
インタビュー形式の声は1件あたりの情報量が多いため、特集型のページで大きく扱うのに向いています。件数を集めてグリッド状に並べるアンケート由来の声と、深掘りしたインタビューの声を役割分担させると、サイト全体の見せ方にメリハリが出ます。
よくある質問
Q. インタビューを録音・録画してもいいですか? 録音・録画する場合は、依頼の段階で「録音(録画)させていただき、掲載用に文字起こしします」と伝え、同意を得てから行ってください。事後に伝えると不信感につながります。
Q. その場で答えに詰まってしまったお客様には、どう対応すればいいですか? 無理に答えを引き出そうとせず、「思い浮かばなければ、後日メールで一言いただく形でも大丈夫です」と選択肢を用意しておくと、お客様の負担を減らせます。全10問に答えてもらうことが目的ではなく、掲載できる声が1つでも取れれば十分です。
Q. 複数人(家族・チームなど)に同時にインタビューしてもいいですか? 可能ですが、発言が一人に偏りやすくなります。可能であれば「〇〇様は先ほどの点についてどう感じましたか」のように、個別に話を振る質問を挟むと、複数人分の声をバランスよく引き出せます。
まとめ — 質問リストより「重ね方」で声の深さは決まる
お客様インタビューで具体的な声を引き出すためのポイントは、次の3つに整理できます。
- アンケートとインタビューを使い分ける。件数が欲しいならアンケート、1件を深く掘りたいならインタビュー
- 所要時間と原稿確認できることを先に伝え、依頼のハードルを下げる
- 一次質問で終わらせず、キーワード・数字・場面で重ねて聞く
10問のテンプレートはあくまで出発点です。実際の会話では、お客様の回答に合わせてその場で重ね質問を組み立てる柔軟さが、当たり障りのない一言で終わらせないための一番の近道だと私は考えています。